#生涯子供なし 福山 絵里子 著
人口への関心はずっと私の中にあるのですが、今回は「生涯子供なし」について。
こちらは発行元が日経新聞出版とあるように、日経新聞の記者の方が記事として書かれてきたこと、取材されてきたことをまとめた書籍です。日経新聞は私も購読していますので、そういえばこんな記事あったかも…というものもありましたが、全編通して興味を持って面白く読み切ることができました。
少子化と一概に言っても国によって状況が異なるとの指摘なんかは、なるほどと思わされました。
- 子供を産まない女性は多いけれども、子供を産む人は複数人産む
- ほとんど大半の女性が子供を産むが一人だけ
- 子供を産まない女性が多く、且つ、産む人も多くは一人しか産まない
色んなパターンが有り得るわけです。ちなみに、1番目はイギリス、3番目は日本や韓国、台湾です。出生率は、それぞれの条件の中で最終的に生まれてくる子供の数と出産可能年代の女性の総数で決まるわけで、複合的な要因の合成値でしか有りません。当たり前のことですが目からウロコでした。少子化の対策も、国によって異なるでしょうし、解も異なるはずなわけですね。ヨーロッパを見て、日本はなぜ同じことが出来ないのか、というのは、少々短絡的すぎる議論ということです。
私達夫婦には子供がいることもあり、子供を持たない方々については、正直あまり好ましい印象は持っていませんでした。だって、今の社会制度のままでしたら、必ずうちの子達は、私達両親だけでなく、そういう子を持たなかった方々の年金を背負っていかなくてはいけなくなるわけで、それってずるくない?と思ってしまうからです。本書の中でも、そのフリーライド性は否定されていませんでしたが、一方で、「社会保障が進み、家族による生活保障が不要になればなるほど、人々は自身の生活保障のために子供を持つ欲求が減ってしまう」と、手厚い社会制度自身が矛盾した結果を招くとの指摘は、頷かざるを得ないものも感じました。年金制度や健康保険制度を中心とする社会保障制度は、やはり、想定外の強烈な少子化を前にして、調整をする必要があるのでしょうね。
また、子供がいない率は、人口が一定度安定しているときでも1~2割程度いるのが普通、というのも少々びっくりしました。(もう少し少ないと感じていました…)先天的に生殖機能に問題を抱えている方は当然一定確率でいますし、経済的や個人の指向から子供を持たない方も当然います。合わせたら、1割は超えるだろう、と。その分は、子供を3人以上産む方が埋めていて、それは結構普通のバランスである、ということです。
ただ、今の日本はそのバランスから逸脱してしまっているのも事実。この傾向はしばらく変わることもなく、よりきつくなっていくでしょう。コロナ禍以降、子供を持つことに否定的な大人が更に増えたことも事実のようです。今後の社会の仕組みとして、子供を持たない大人が3~4割程度いることを前提にした社会設計が必要になるのかと思いました。地球環境悪化の見通しを思えば、過大な人口は社会にとって必ずしもアドバンテージにはならないのではないか、とも私は考えていますので、ゆるゆると人口を今は縮めていき、身を軽くするという戦略は決して悪いことばかりではないのかと思います。経済成長至上主義且つ、人口増こそ経済成長ブーストだと考える方には受け入れがたい意見とは思いますが。
