中高年リスキリング 後藤 宗明 著
リスキリングなる言葉が世間に広まるようになって久しいですが、著者の実体験を踏まえながら、リスキリングの要点をまとめた本です。
仕事柄、この手のセミナーに出席する機会が有り、たまたま会場にて頂けたので読んでみた次第です。「中高年」と銘打っているだけあって文字も大きく(これは大事!)、著者自身の苦労話を交えながらよくまとまって章立てされており、読みやすい内容でした。
どちらかというと50代、60代の方々を主眼においた本ですが、40代でも30代でも読むことは無駄でないと思います。結局、リスキリングとは、社会人になってから築き上げた第一のキャリアや技能に対し、追加のキャリアや技能を手に入れるにはどうしたら良いのか?というお話です。30代にもなれば、早い方でしたら既にひとつの分野で一定の技量やキャリアを手に入れているでしょうから、十分リスキリングは検討の俎上に上がってくると思います。(実際、筆者の後藤氏は40代からリスキリングに取り組んでおられます)
私なりに要点と思った点は以下の通り。
- 労働とは自分の時間を投資して、賃金と「スキル」を手に入れる過程。今の仕事からちゃんと対価を得られているかどうか考える。
- いきなり大ジャンプしない。既存の足場(1番目のキャリア)から隣接領域へ進出して、ステップを踏んで希望するキャリアへ近づいていく。(いきなり転職なんてしない。社内転属などでやりたい仕事に近づいていく。)
- とにかく縁を作る。事前調査も読書も耳学問も大事だが、最後は「やってみる」「聞いてみる」「訪ねてみる」が大事。何が縁で次に繋がるかわからない。
必要なのは未来への危機感
ただ、はっきり明言はされていませんが、全編に通底しているのは「未来への危機感」です。AIの進化による失業、年齢、体力、年金不足…危機感の源泉は色々であろうと思いますが、今のキャリアのままで未来もやっていけるかどうか、と考え、不安を感じている人がこの本の対象です。もっとも、そもそもそれらを感じていない人がリスキリングの本なんて手に取らないでしょうから、これも尤もなことではありますが。つまり、この本を読もうと思った時点で、その人はリスキリングへの大事な一歩を踏み出し始めていることになりますね。